札幌の造園会社で働くTさんは、昨年12月、溜まりに溜まった未払い残業代を会社に請求することを決意しました。しかし会社はまともに取り合おうとせず、あろうことか今年2月、「3月末での雇い止め」を通告してきました。Tさんはすぐに札幌地域労組に相談、加盟。2回の団体交渉で組合の追及を受け、会社はTさんの解雇を撤回しました。

正社員なのに「雇い止め」?

4年前に入社したTさんは、繁忙期には毎日のように9~13時間労働が続くのにも関わらず、残業代がほとんど支払われないことに大きな疑問を持っていました。会社には話せば伝わると思い、資料を提示しながらひとりで残業代を請求。

しかし会社は曖昧な返事に終始し、あろうことか、2月末に「雇い止め」を通告してきました。

Tさんは、会社でも「正社員」と呼ばれ、退職金積み立てをしていましたし、有期雇用にツキモノの更新の話も一切されたことがありません。毎年3月に渡される「雇用契約書」も、その年の賃上げ分を言い渡されるものとしか思っておらず、雇用期間(の定め)も期間の日付は書いてあるものの無(期)に〇がついていたので、さして気にしていませんでした。

それにも関わらず、突然の「雇い止め」。

慌てたTさんがその場で「解雇ってことですか?」と聞くと、社長は「解雇だと不当解雇になるから違う。契約の更新をしないってこと」と有難いネタばらし(?)。

闘いの火ぶたが切って落とされました。

解雇予告は撤回!

相談を受けた札幌地域労組はすぐに会社へ団体交渉の申入書を送りました。

団体交渉の席上で、社長&弁護士は「社員は全員有期雇用」と言ってはばかりませんでしたが、組合は、Tさんが正社員であり解雇は不当であるという数々の証拠を示しました。
不誠実交渉について北海道労働委員会に救済申し立てを行い、調査期日も決まったさなか、3回目の団体交渉の直前、解雇予定日の1週間前に、会社から解雇撤回の知らせが!Tさんの雇用を、1日も途切れることなく守ることができました。
この闘いは北海道新聞(3月27日朝刊)にも掲載されました。

今後は残業代について交渉を続ける

速やかな解雇予告撤回を受け、組合は労働委員会への救済申し立てを取り下げ、解雇事件については会社と和解しました。

Tさんのみならず他の社員も「有期雇用」から、「無期雇用」の契約になり、4月から安心して仕事を続けています。

今後は解雇事件の発端である未払い残業代について交渉を続けます。

この事件は、有期雇用労働者の立場の弱さを悪用した不当解雇です。
Tさんが、仮に本当に有期雇用で契約させられていた場合、雇い止めを恐れてそもそも残業代請求は難しかったでしょうし、今回ほど守りやすくはありませんでした。雇用継続は本当に良かったですが、「Tさんが正社員で良かった」だけで済ませてはいけません。
非正規雇用労働者の法的保護の強化が急務です!

 

POINT

・残業代請求に限らず、たったひとりで会社に待遇改善の要求をするのは危険です。事前に近くの労働組合に相談してください。

・残業代の金額に疑問を感じたときは、まずボールペンで自分の労働時間を記録することから初めてください。いつか行動を起こすときに、強い味方になります。