花畑牧場でストライキをしたベトナム人労働者が、200万円の賠償請求と刑事告訴という報復を受けた事件は、組合の要求が全て受け入れられる形の和解で幕を閉じました!

3月18日付和解協定書で、会社はストの原因となった光熱水費値上げの問題についてベトナム人労働者へ全面的に謝罪。200万円の賠償請求と名誉棄損の刑事告訴に理由がないことを認め、取り下げました。
さらに、入管に提出した雇用契約書に基づくと、スト参加者への“雇い止め”は、9月末や10月末で満了する契約の“中途解約(=解雇)”になるため、残りの期間の補償を約束。文句なしの解決で、権利を守るために起ち上がったベトナム人労働者の全面的な勝利です!
この問題は、新聞各社、テレビ各局の他、フジテレビのバイキング等でも取り上げられ、外国人労働者の置かれた状況を表す事件として全国で報道されました。大きなポイントは3つです。
労働条件の不利益変更は労働者の合意が無ければできない
事件の発端は、毎月固定だった水道光熱費の実費精算切り替えに伴う値上げ(7000円→約1万5000円)でした。
今年は大寒波&灯油の高騰で燃料費がかさんでいますし、心情的には会社の言い分も分かります。
しかし、光熱費の金額にどれだけ合理性があったとしても、固定という契約からの不利益変更には変わりなく、労働者の合意無しに労働条件の不利益変更はできません(労契法第3条・第8条)。
ベトナム人労働者は、水道光熱費が固定7000円という契約で花畑牧場へ働きに来ているので、この約束を勝手に破った会社に対して怒るのは当然と言えます。
ストライキは人類普遍の権利
花畑牧場のベトナム人労働者は、労働組合を結成せずにストライキを決行しました。
理想的には、ストの際に「これは労働組合の活動だ」と一言でも言ってくれれば、労働組合法によって活動が大きく保護されたのですが、それがなくとも、憲法28条でストライキ含む労働三権が保障されています。
日本国憲法第二十八条
勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。
そして仮に憲法がなかったとしても、約束を破った上に抗議の声を無視する会社と対等な関係を築くために、仕事の拒否は労働者が使える最後の手段であり、ストライキは人間が尊厳を守るための根源的な権利と言えます。
組合活動への刑事告訴は不当
会社は、組合がスト当日の社長と労働者の話し合いの録音データを公表したことを理由に、ベトナム人組合員3人を名誉棄損で刑事告訴しました。
暴力事件や度を越した虚偽情報の拡散ならまだしも、交渉事項の公表を理由に刑事告訴など言語道断で、国家権力を利用した脅しと言えます。まして外国人であれば、警察への恐怖感は日本人以上です。
組合は、刑事告訴について北海道労働委員会へ不当労働行為の救済申し立てをする予定でしたが、その直前に会社から誠実な謝罪と和解の提案がなされたため、事件は幕引きとなりました。

この事件はユニオンとかち(帯広)の全面協力のもと解決し、北海道での団結の輪も一層強くなりました。権利と尊厳を守るために起ち上がったベトナム人労働者へ敬意を表すると同時に、この問題を氷山の一角とした外国人労働者を取り巻く社会の問題に目を向けていきましょう!
ベトナム人労働者雇い止め問題で和解 一連の対応を謝罪 中札内花畑牧場(十勝毎日新聞)
花畑牧場雇い止め問題 一連の対応謝罪 ベトナム人3人と労組に解決金(北海道新聞)
花畑牧場がベトナム人従業員と和解 問題認め賠償請求も取り下げ(朝日新聞)
花畑牧場和解でベトナム人安堵 「全部解決して本当に良かった」(共同通信)