11月19日の労働委員会において、これまでに組合が申立てをしていた「2件の不当労働行為事件が和解」となりました。

組合としては、法人と真摯に正々堂々と誠実に建設的な議論をすることを望んでいたので、不当労働行為救済申立ては、本当に…本当に不本意で悲しい出来事でした…。

しかしながら、最終的に組合が望む形で和解できたので、法人との遺恨は一切残さずに、この件については終わりにしたいと考えております。

…ということで、今回の和解について少し説明したいと思います!

新人事制度完全白紙撤回…からの労働委員会

11月19日の労働委員会に先駆けて、法人は10月20日に新人事制度を白紙撤回しました。

これは、組合が新人事制度の欠陥や矛盾点を指摘するだけでなく、法的に問題のある部分を徹底的に調べ上げて、制度の白紙撤回を求めていたことが大きく影響しました。

また、交渉の過程で法人が不当労働行為を行い、事態を非常に悪化させていました。そのことを踏まえての労働委員会だったので、組合にとって、とても有利に事を進めることができました。

並びに、組合の申立ては、かなりの高確率で勝てる内容だったので、法人も組合に対し誠実に対応しなければならない状況で労働委員会の期日を迎えました。

気になる和解内容とは…

労働委員会で和解するときには「和解協定書」を締結します。なので、その内容は非常に大切で、尚且つ、和解ができるかどうかの判断材料になります。

故に、11月19日の労働委員会は、和解協定書の内容の調整がメインとなりました。

組合としては、内容に納得ができなければ、和解をするつもりは一切ありませんでしたが、労働委員会が組合の心情を汲む形で和解条項を提案し、法人が応じたため、和解協定書締結に至りました。

和解条項は、3つの条項で構成されていて、そのうちの1つが非常に意義のある項目となりました。

以下、原文です。

和解協定書

 令和2年道委不第8号恵佑会事件について、申立人札幌中小労連・地域労働組合(以下「組合」という。)と被申立人社会医療法人恵佑会(以下「法人」という。)は、次のとおり和解協定を締結する。

  1. 組合及び法人は、法人が令和2年(2020年)7月から段階的に導入を予定していた新人事制度(以下「本件新人事制度」という。)は白紙撤回されたことを相互に確認する。
  2. 法人は、組合に対し、本件新人事制度の説明や提供した資料に不十分な点があったことを認め、将来、新たな人事制度の導入が行われる場合には、組合と改めて誠実に交渉を行うとともに、交渉の際には明瞭な説明資料の提供や説明を行うことを約束する。
  3. 組合は、本件救済申立てを取り下げる。

以上

令和2年(2020年)11月19日

       申立人 札幌中小労連・地域労働組合

執行委員長 佐藤正剛

上記代理人 三苫文靖

同弁護士 小野寺信勝

     被申立人 社会医療法人恵佑会

理事長 鈴木康弘

上記代理人弁護士 〇〇〇〇

  同        〇〇 〇

     立会人 北海道労働委員会

審査委員 朝倉 靖

参与委員 馬場 治

同    百瀬康弘

以上の3項目で構成されているのですが、実際これらの条文が、今後どのように職場に作用していくのか説明をしたいと思います。

新人事制度の白紙撤回は絶対に覆らない!

まず、第1の条項の『組合及び法人は、法人が令和2年(2020年)7月から段階的に導入を予定していた新人事制度(以下「本件新人事制度」という。)は白紙撤回されたことを相互に確認する。』ですが、この条文を入れることで法的に撤回が確認されたことになります。

団体交渉(労働委員会)で確認された事を協約化することで、強力な法的保護を受けることになります。

労働組合法 第14条(労働協約の効力の発生)
労働組合と使用者又はその団体との間の労働条件その他に関する労働協約は、書面に作成し、両当事者が署名し、又は記名押印することによってその効力を生ずる。

労働組合法 第16条(基準の効力) 
労働協約に定める労働条件その他の労働者の待遇に関する基準に違反する労働契約の部分は、無効とする。この場合において無効となった部分は、基準の定めるところによる。労働契約に定がない部分についても、同様とする

これにより、今回導入されそうになった新人事制度は、法的にも正式に撤回され、その決定が覆ることは絶対にあり得ません。

もし法人が、この協約を破って制度の導入を強行しても、それは無効となります。あくまで労働協約が優先されます。

つまり、組合が、今回の新人事制度導入の可能性を完全に消し去ったということですね。

…なので、皆さーん、安心して働いてくださいねー!

組合がある限り、法人には、今後も勝手に制度の導入が出来ない強力な制約がかけられる!

今回の和解内容で1番の成果は、第2条項の『法人は、組合に対し、本件新人事制度の説明や提供した資料に不十分な点があったことを認め、将来、新たな人事制度の導入が行われる場合には、組合と改めて誠実に交渉を行うとともに、交渉の際には明瞭な説明資料の提供や説明を行うことを約束する。』というところなんです。

さらりと和解条項に入っていますが、これはめちゃくちゃ大きいんです。

まず、新人事制度導入についての説明に不備があったことを正式に認めている点、そして、何よりも将来において新たな人事制度導入が行われるときには、必ず組合と協議をすることを約束した点が非常に大きな成果なのです。

すなわち、職員の労働条件変更について、法人は組合に強力な制約をかけられていることになります。組合の合意なしには、何もできない状態と言っても過言ではありません。

もっと簡単に言うと、組合がある限り、勝手に労働条件の変更は出来ないということなんです。

この協約の獲得で、恵佑会ユニオンは、法人にとって大きな…そして、分厚い壁になったのです。

さらに、協議する義務が課せられただけでなく、今後、不当労働行為と疑われる言動に対しても抑止力になるんです。

と言うのも、和解協定書に誠実に交渉をするって書いたくせに、テキトーな事をやれば、それは厳しく労働委員会に怒られることなります。まぁ…当たり前ですよね。

最後に第3条項ですが、これは和解が成立したので、事件を終結させるために入れなくてはならない条項ですね。これにて、今回の新人事制度問題は一件落着ということです。

ユニオンって、意外に凄いんです

6月29日に組合結成をして以来、約5カ月の間に団体交渉を3回行い、労働委員会への救済申立を2回行った結果、新人事制度は完全白紙撤回となりました。

その上、今後新たに人事制度を導入する際には、必ず組合と協議をしなくてはならない制約までかけることができました。

恵佑会ユニオンは、多数派を占める大きな組合ではないし、法人側には4名も弁護士が就いていました。普通に考えたら、あまりに不利ですよね。

それにも関わらず、恵佑会ユニオンは、なぜこれだけの成果を上あげられたのでしょうか…?不思議ですよね。

これには、2つの理由があります。

まず一番大きいのは、組合員たちが覚悟を決めて頑張ったからです。組合活動ではこれがすべてと言っても過言ではありません。

そしてもう一つの理由は、あまり知られていませんが、日本の法律はびっくりするくらい、労働組合に有利になっているからです。

つまり、覚悟を決めて立ち上がれば、なんとかなることがめちゃくちゃ多いんです!弁護士が4人も出てきても、なんとかなっちゃうんです!ユニオンって、意外にすごいんです!

昨今の労働問題は多岐にわたります。労働者それぞれの悩みも千差万別です。大変な世の中になってしまいました。

しかしながら、すべてにおいて労働組合が万能とは言えませんが、職場に労働組合があれば、今回のように問題解決できる可能性がグッとあがります。

いえ…もっと言ってしまえば、労働組合があるのとないのとでは、雲泥の差が出ると言ってもよいでしょう。

この記事を読んで、迷っているあなた!ユニオン結成について詳しい話を聞きたいあなた!

まずは、札幌地域労組までご相談ください!

…ということで、恵佑会ユニオンは、これからも職員が気持ちよく、健やかに仕事ができる環境実現の為に邁進してまいります!引き続きよろしくお願い致します!