【第2回】労働組合にはこんなことができる―3つのパワハラ撃退

【第2回】労働組合にはこんなことができる―3つのパワハラ撃退

この記事は、北海学園大学・川村雅則ゼミナール発行『学校で労働法 ・ 労働組合を学ぶ札幌地域労組に聞いてみよう労働組合ってどうすごいんですか?2018』の内容を一部転載し、全3回に渡りご紹介する企画の第2回目です。

今回は、不当な転勤命令をうけたというケースです。

本部は東京にあり、人間ドックなどを商売にしている札幌市内のある医療機関で働く、50代の看護師さんからの相談です。

前回の記事はこちら icon-external-link 

川村雅則教授のウェブサイトはこちら icon-external-link 

転載元『学校で労働法 ・ 労働組合を学ぶ札幌地域労組に聞いてみよう労働組合ってどうすごいんですか?2018』のダウンロードはこちら icon-external-link 

 

 

東京への突如の転勤命令―札幌市内医療機関で働く看護師の事例

彼女は、正社員ではなくて1年単位の契約を結ぶ有期雇用で働いていたのですが、今年の4月に突然、東京に転勤してくれという命令が出されました。

一般的には、転勤を断ると会社を辞めなければならないという就業規則が定められている場合が多い、つまり、会社側にしてみれば人事権の行使ですから、労働者が断ることはできない仕組みにしているわけです。

 

彼女の場合、家族がこちらにいるので、家族を残して転勤しなければならないと悩んだわけですね。

ただこれは実際には、転勤ができないのであれば辞めてもらうというように、辞めさせるための追い込みのテクニックだったのです。

東京に行けとか大阪に行けとか言えば、こいつは辞めるだろうと、労働者を辞めさせるテクニックとしてこういう手口はよく使われるのです。

 

そこでこの相談でもさっそく、団体交渉に応じてくださいと内容証明郵便を東京の本部に送りました。

すると、了解しましたという返事と、会議室が即手配されて、東京の一等地にある法律事務所のかなり年配の弁護士さんと会社の幹部が札幌まで来られました。

私は一目見て、この弁護士さんは大物だな、と察しました。

 

大物弁護士との団体交渉。5分で円満解決

ちなみに団体交渉と言っても、いきなりけんか腰で始めるわけではありませんからね。今日はお忙しいところご苦労様です、とか言いながら始めます。

 

まず、この相談では、就業規則が手元にありましたので、転勤に関する箇所を読み上げます。

お宅の場合は、法人は職員に対して転勤を命ずることができる、と就業規則の第何条に書いてありますね。そして、その転勤命令は拒むことはできない、と書かれています。

拒むことはできないという点に関わって、懲戒に関する規定が定められています。

ちなみに懲戒イコール解雇ではありません。懲戒処分はおおむね4段階に分かれていまして、軽い順から、反省文を書く譴責処分→減給処分→出勤停止→懲戒解雇となっています。

 

このケースでは、転勤を拒めば会社は解雇ができるとなっていました。

 

しかし、ここで重要になるのが、職員の定義です。職員とは誰を指すのかという点についてこの会社の就業規則ではどう書かれていたか。

たいていは、職員の定義などは前のほうに書かれています。

そこを読むと、職員とはこの法人が雇用してどうのこうのと書いてあって、「ただし、期間を定めて雇用する者は除く」と書いてあったんですね。

 

つまり、有期雇用で働いている彼女には転勤の規定は適用されないはずです。

私がそのことを指摘して、彼女には転勤命令は出せませんよね、と言ったところ、相手方の弁護士さんが「あ、それはその通りです」とあっさり言いました。

それで解決したんです。彼女をあんなに悩ませた問題がものの5分で、しかも円満に終わったんです。

 

和解協定書

和 解 協 定 書

公益財団法人■■■■■■(以下「法人」という)と札幌管理職ユニオン(以下「組合」という)は、■■■にかかわる労使紛争について下記のとおり和解する。

1. パワーハラスメントの防止
法人は、■■■に対し、今後ともパワーハラスメントを行わず、またパワーハラスメントと疑われることのないよう注意する。

2. 不利益な取り扱いを行わない
法人は、■■■が組合に加入したこと、および団体交渉を求めたことを理由として不利益に取り扱う意思がないことを改めて確認する。

3. 紛争解決の確認
法人と組合は、組合の申入書に関する事案について、以上を以ってすべて円満に解決したことを確認する。

以 上

和解協定はこのとおりです。

本当は、パワハラを行ったという点まで認めさせたかったのですが、会社側はそれは認めず、今後もパワハラはしませんと、多少逃げたような文章になりました。

まあそれでも、解決に会社も協力してくれたからいいかなと思いました。

 

そして次の文章で、今回の相談者である彼女は、今後はうちの組合に入り続けますから、そのことを理由に、あるいは団体交渉を求めたことを理由に、不利益な取り扱いをしない、取り扱う意思がないということをあらためて確認しました。

それは彼女の安全を保障することになるわけです。彼女にしてみれば、機会があったら会社からまた何かを言われるのではないだろうかと不安なわけですよ。

そんなことはしない、させないことを労使で確認するわけです。

 

彼女の場合は、解雇とか職場から追い出されるというケースではありませんのでお金の要求はしません。

また明日からも普通通り働いてください、ということで、彼女は職場で元気に働いています。これで解決です。

 

ということで第2回はここまでです。いかがでしたか? 労働組合には、このようにたった5分で問題が解決させ、元気に働くことも実現させる力があります。

ひとりで悩まずに、まずはご相談ください。

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