2006年1月25日、札幌高裁において約50名の傍聴者が見守るなか、ルミエール虐待事件が表面化した当時の施設長・長沼シズ子氏(理事長の妻)への証人尋問が行われました。
今回は札幌高裁における、ルミエール元施設長の証言を聞いた福祉関係者の声を紹介します。
行政の詰めは甘い
役所の監査では、ベッド冊の位置までチェック指導しているが、ルミエール虐待事件で、 こんな重大事が曖昧なまま、実質何のペナルティも課され無いのなら、何の為の監査かわからない。 (介護職Aさん)
一緒に泣きました
内部告発した職員の方が、経営者より福祉に関わる資質が高いことを認めて、 利用者のために告発した職員の力を借りて施設改善を進めるべきだ。
多田さん、坂本さんの証言で、施設長に望みを託し、意を決して虐待の事実を訴えたのに、 逆に悪者にされ、孤立させられた気持を感じ、一緒に泣いた。(特養ホーム、介護職員Sさん)
札幌市内の社会福祉法人理事長の感想
長沼証言から一連の流れを推測すると、出だしの対応を誤ったこと、次にその誤りを正す、ナンバー2、ナンバー3が存在しなかった、あるいは存在したが、施設長は聞く耳を持たなかった。全てがそれに尽きると思われる。
虐待の訴えがあった時点で、その事実があったか否かに着目し、社会福祉事業を担う施設のトップ としての責務と倫理に基づき行動すべきであったと思う。
推測するに、虐待を見たと訴えた者も、加えたとされた者も、ともに組合員であったという事実から、 組合対策に使えるという思惑を持ったことで、判断を誤り、問題を拡大させることとなったのではないか。
またその誤った判断に対して、施設長の次の立場にいるものや、周囲が適切な助言アドバイス、 時に苦言を呈することはなかったのか。
無かったとするならば、組織としての体をなしていないと 断ぜざるを得ない。(編者註:その体制は今も続く)
繰り返しになるが、虐待が行われているという事実のみにしっかりと向き合い、 それを許さないという姿勢が貫かれていれば、虐待を行った職員に理非を説き、 再発を許さない対応がとられたであろう。
そして、新聞に取り上げられることもなく、 裁判などという事態にも至らなかっただろう。
最後にもう一言、法律には門外漢であり、あれこれ言うべきではないと思うが、 事件当初からかかわってきた顧問弁護士が、一体施設にどのような助言をし、 かかわってきたのか、弁護士の対応にも疑問を持つ。
少なくとも的確な対応とは思えないのだが・・・。
札幌地域労組 原田優子委員長のコメント (元・特養の介護主任)
虐待が続発していたルミエールの当時の最高責任者であった長沼シズコ元施設長の証言から分かったことは、 長沼シズコ氏には虐待を虐待と認識する想像力も、知識も、責任感もなかったということだ。
介護は教科書通りにいかないことも現実には多い。それゆえにこそケアの理念の浸透が求められるのであり、 虐待の定義が繰り返し示されてきたのである。
本来、特別養護老人ホームは、心身の障害ゆえに他者の援助がなければ、人としての尊厳を保った生活が できない方々に、尊厳ある生活を保障することで、介護報酬を受けて運営されている施設だ。
施設長には当然その責任があるのだが、こんなことがあったかなかったか分からないこととして、 介護報酬の受け取りを許されるのであれば、記録さえしなければ、証拠さえ残らなければ 「虐待ではない」と居直ることを黙認することにならないだろうか。