千歳相互バス支部(2010年結成、組合員数26名)で、4月25日始業時より、24時間ストライキを実施しました。この影響で、当日は千歳市内97便全便が運休。道内では20年ぶりの公共交通機関でのストライキだそうです。

前日に23時過ぎに団体交渉が決裂し、急転直下のストライキ決行

団体交渉の休憩中に打ち合わせ

4月25日、札幌地域労組千歳相互バス支部(組合員数26名)が24時間ストライキを実施しました。
前日に、会社による定期点検の不正疑惑(法定3か月点検を一部未実施にも関わらず、実施したように書類作成等。陸運局は組合の言い分を聞かずに会社の言い分を追認した)についての問題、去年1年間の不誠実団交、春闘要求などについて、17時~23時20分頃まで交渉を続けていましたが、妥結に至らず、組合にとっては苦渋の決断でした。
23時頃は、妥結間近に思えたのですが、和解協定書に調印する直前、会社がベースアップ(正社員で一律5000円/月)の開始日を6月からだと主張し始め、組合が4月に遡っての賃上げを求めたにも関わらず、社長がそれを頑なに飲まなかったために、団交開始から6時間の間、妥協に妥協を重ねていた組合員はしびれを切らし、「もう知らん!」と交渉決裂。スト突入が決まりました。

交渉決裂後、スト突入をメディアに話す(4月24日23時26分)

スト当日は朝4時に営業所集合

24時頃まで軽い打ち合わせを行った後に解散しましたが、スト破りを警戒して、一部の組合員(執行部5名+札幌地域労組から2名)はスト当日の朝4時(始発バスの準備が始まる時間)に集合しました。興奮と緊張も相まって、前日はなかなか寝付けない人が多かったようです。

会社は団体交渉決裂直後から全便終日運休をお知らせしました。組合員だけでは全ての便を止めることはできないのですが、路線バスではない企業送迎等も行っており、そちらに人員を割く判断をしたのだと思います。
朝5時頃、営業所の休憩室でテレビをつけると千歳バスのストライキのニュースが報道されていました。

バス停に貼られた「ストライキのため全線終日運休」の貼り紙

10時からストライキ集会を実施

ストライキ集会

ストライキ集会では、組合員がマイクを回してそれぞれ思いの丈を述べました。
今回、路線バスの運転手だけでなく、スクールバスの車掌さん(添乗員)もストライキに参加しています。車掌さんは、子供たちが安心して登校下校できるように、顔を覚えたひとりひとりの見守りをしています。大事な仕事ですが、運転手(非組合員)からのパワハラなどを会社に訴えて、交渉しています。

ストライキの日、組合員は何度も「市民に申し訳ない」「今日は年金支給日のあと初めての火曜市がある日だから、バス使えなくて困ってるだろうなあ」「障害を持った子ども達が、いつもの路線バスがないと環境が変わって大変だろうなあ」「お隣さんが娘を学校まで車で送迎したと聞いた」などという話をしていました。この日、千歳市内はいつもより交通量が多く、運転に慣れない様子の車も多く見かけました。

しかしストライキを後悔している様子はありません。

市民の足を守る大事な仕事なのに、それに見合う待遇がなく、勤続25年の人も年収300万円で、この3年間のボーナス合計は18万円です。バスの安全も軽視され、市民に多大な不便を強いる大幅減便も簡単に決める会社に対して、こうでもしなければ抗議の意思が伝わらないことを、前日の団体交渉では嫌というほど思い知らされました。

この日以降、会社からは何も連絡がきていません。問題は何も解決されていませんが、組合は市民の足を守ることを重視し、翌日からはそれぞれの職場に戻りました。利用者のみなさんからは「運転手さん頑張って」などの声があり、励まされる思いです。
ストライキ実施後、新たな組合員が加入し、勢いは益々増しています。
次回団体交渉は、48時間ストを背景に交渉に臨みます。

ストライキの影響は社会全体に及ぶ

今回のストライキは、全国のテレビ・新聞で報道されました。
30年間実質賃金が下がり続けている日本社会で、労働者はストを打てるということの意義は大きいです。
働く人には声をあげる権利がある。会社とまともに話ができないの黙って働き続ける理由はない。
尊厳を持って働くために、尊厳を持って生きていくために、団結しよう!
職場の悩みは、近くの労働組合へ相談してください。

去年、札幌地域労組で初の著書が発売されました。千歳相互バス支部のエピソード他、非正規労働者、管理職など、様々な職場の闘いが豊富な実例と共に解説されています。⇒『小さな労働組合 勝つためのコツ』